八甲田
東側(田代平東方の石倉山山麓)から見た北八甲田火山群。
青森県中央部に位置する八甲田火山群は,
南八甲田火山群および北八甲田火山群の2つの成層火山群と八甲田カルデラからなる大規模な火山複合体です。
火山体を形成する火山噴出物の分布域は東西20km,南北15kmにおよびます。
さらに八甲田カルデラの形成にともない噴出した大規模な火砕流堆積物は
火山体周辺に広く火砕流台地を形成しています。
[空から見た八甲田山]
活動史
八甲田火山群の活動は,大まかに南八甲田火山群の形成,八甲田火砕流の噴出,北八甲田火山群の形成の3つに分けることができます。
ただし時間的に見ると,南八甲田火山群の活動は八甲田火砕流の噴出の時期を挟みその後まで継続しています。
南八甲田火山群は櫛ヶ峯(1517m)を最高峰として,東西約16km,南北10kmの範囲に比較的なだらかな山体が連なっています。
おもなピークとしては櫛ヶ峯,駒ヶ峯(1416m),横岳(1339m),猿倉岳(1354m),乗鞍岳(1450m),赤倉岳(約1290m)などがあり,
ピークはおおむね東西に配列しています。
北八甲田火山群は,大岳(1584m)を最高峰とする複数の小規模成層火山体の集合体です。
山体は,北から前嶽(1252m),田茂萢岳(1324m),赤倉岳(1548m),井戸岳(1550m),大岳,硫黄岳(1360m)がほぼ南北に配列し,
一方小岳(1478m),高田大岳(1552m),雛岳(1240m)がその東側に東西に配列しています。
南北列と東西列は大岳の南側で交差します。
北八甲田火山群の北東から東側には田代平の平坦地とそれを取り囲む半円形の稜線が見られ,
カルデラ地形と考えられます。
カルデラ縁の南西側は北八甲田火山群の噴出物に覆われてしまっています。
有史の活動
八甲田山は気象庁の指定する活火山の一つですが,
それは噴気活動や地震活動を根拠とするもので,有史の活動は知られていませんでした。
最近の研究で
酸ヶ湯・地獄沼周辺で水蒸気爆発により形成されたと考えられる堆積物が発見され,
それらが平安時代から江戸時代までの間のものであることが明らかにされました。
この堆積物を形成した水蒸気爆発は火山活動としては小規模なものですが,
地獄沼周辺は八甲田地域でも有数の観光拠点であり,仮に同じような活動が起きた場合には被害が生じる可能性が考えられますから,
今後より詳しい調査が必要です。
参考リンク
「日本の第四紀火山カタログ」八甲田
火山データベースWEB版
[青森県の火山]
[月刊ホームページ 2000/01]
Minoru SASAKI
minoru@cc.hirosaki-u.ac.jp